認知症について
目次
◇認知症と物忘れの違い
◇三大認知症
◇認知症セルフチェック
◇家族の接し方・やってはいけない対応
認知症と物忘れの違い
・物忘れ
加齢による物忘れは、認知症による物忘れとは違って忘れたという自覚があります。体験したことの一部を忘れても体験そのものは覚えているため、忘れたことに関するヒントがあれば思い出すことができます。
・認知症
認知症による物忘れの大きな特徴は、物忘れの自覚がないことです。体験したこと全部を忘れてしまい、自分が忘れていることもわからなくなります。体験したこと自体を忘れているので、体験したことを思い出すヒントを与えたとしても思い出すことはできません。
例えば…
○夕食に何を食べたのか思い出せない→物忘れ
食事した事実を思い出せない→認知症
○買い物に出かけ、何を買うのか忘れる→物忘れ
買い物に出かけ、途中で外出した理由を忘れる、また自分の居場所がわからなくなる→認知症
⚠️物忘れが進んだ状態の「軽度認知障害(MCI)」に該当する高齢者も増えています。厚生労働省によると、軽度認知障害に該当する65歳以上の高齢者は400万いると言われおり、高齢者のうち約4人に1人がこの“認知障害予備軍”に該当する計算になります。軽度認知障害を放置しておくと、将来的に症状が悪化する可能性が非常に高くなります。
三大認知症
認知症のうち、およそ半数はアルツハイマー型認知症です。次に多いのがレビー小体型認知症、そして血管性認知症と続きます。これらは「三大認知症」といわれ、全体の85%を占めています。
アルツハイマー型認知症
物忘れから気付くことが多く、今まで日常生活でできたことが少しずつできなくなっていきます。新しいことが記憶できない、思い出せない、時間や場所がわからなくなるなどが特徴的です。また、物盗られ妄想や徘徊などの症状が出ることがあります。
主な症状
・BPSD(行動・心理症状)
経過中に無為・無関心、妄想、徘徊、抑うつ、興奮や暴力などの症状が現れることがあります。
・身体面の症状
進行するまで目立ちません。
レビー小体型認知症
実際にはいない人が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常な言動などの症状が目立ちます。また、手足が震える、小刻みに歩くなどパーキンソン症状がみられることもあります。頭がはっきりしたり、ボーッとしたり、日によって変動することも特徴的です。
主な症状
・認知機能障害
注意力がなくなる、ものがゆがんで見えるなどの症状が現れます。レビー小体型認知症では、最初は記憶障害が 目立たない場合もあります。
・抑うつ症状
気分が沈み、悲しくなり、意欲が低下する症状です。抑うつ症状は、レビー小体型認知症の人の約5割にみられ るともいわれます。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血などによって発症する認知症です。脳の場所や障害の程度によって、症状が異なります。そのため、できることできないことが比較的はっきりとわかれていることが多いです。手足の麻痺などの神経症状が起きることもあります。
主な症状
・認知機能障害
障害される能力と残っている能力があります。判断力や記憶は比較的保たれています。
・身体面の症状
脳血管障害によって、手足に麻痺や感覚の障害など神経症状が現れることがあります。ダメージを受けた場所に よっては言語障害などが出る場合もあります。
認知症セルフチェック
長谷川式スケール
長谷川式スケールとは、精神科医に長谷川和夫氏によって1974年に開発された認知症検査で、その後1991年に一部改正されました。今なお、認知症検査の現場で使われ続けています。
30点満点中、20点以下だと認知症の疑いがあるとされ、点数が低いほど重症であるとされています。
具体的な設問と得点については、下記のとおりです。
家族の接し方・やってはいけない対応
接し方のポイント
認知症の方と接する場合、どのようにコミュニケーションを取ればいいのか、どう接すればいいのかと思い悩み、不安を感じてしまうことが多いのではないでしょうか。しかし、不安を抱えているのは認知症の方も同じです。
認知症の方は、自宅にいるにもかかわらず、自分の部屋やお手洗い、玄関の場所などわからず、知らない人が身近にいると感じています。
もし自分が同じ状況に置かれているとすれば、その不安も理解できますよね。認知症の方と接する時の原則は、本人が感じている不安を受け止めることです。
否定したり叱ったりしない
認知症が進むと、それまでできていた日常動作ができなくなったり、記憶力が低下して、ついさっきのことも忘れてしまったりすることがあります。しかし、認知症の症状が進行しても、本人の羞恥心やプライドが損なわれるわけではありません。その度に指摘するようなことは、本人を傷つけたり、混乱を招いたりすることがあるので、行動や発言に対して、否定しない、叱らないことが大切です。
認知症の方の主張がたとえ事実と違ったとしても、本人はそれを事実だと感じています。認知症の人の言動に対して真面目に返しても、信頼関係が崩れるだけです。
本人がプライドや尊厳を守る接し方を何より心がけましょう。
褒める、感謝する、相槌を打つ
たとえ認知機能の低下が進んでも、「嫌だ」「嬉しい」という感情が消えることはありません。
認知症の方と会話するときは、褒める、感謝する、相槌を打つの3つを心がけましょう。
話を聞いてもらった、認めてもらったと感じることで、認知症の方の「快」の感情が蓄積されていきます。
放置するなど、ストレスを与えるのは厳禁
ストレスを与えられたり、放置されることも、認知症の方にとっては好ましいことではありません。
不満が表面化してしまい、大きな声を出す、暴力的になるケースがあるからです。
さらに、無視する、放置するといった行為は孤独感を煽り、感情を爆発させてしまう引き金となるので注意が必要です。
かけがえのない存在であることを認識してもらう
少しずつできないことやわからないことが増えていき、自分が今までの自分ではなくなっていくように感じてしまいます。
認知症になっても他人の役に立てる存在であること、家事などの役割を通じて周囲の人たちに貢献していることを感謝と共に伝えましょう。かけがえのない個人であると感じてもらうことで、不安や絶望の気持ちを軽くすることができます。
家族の心理ステップ
1️⃣戸惑い・否定
家族は、「この間まで元気だったのに」と、その変化にショックを受け、戸惑いを覚えます。認めたくないばかりに「そんなはずはない」「一時的な不調だ」「他の病気の影響だろう」と、認知症の症状が現れていることを 否定します。
2️⃣混乱・怒り・拒絶
うまくいかないモヤモヤ、そして認知症の本人に対する思いが「怒り」へと変わっていきます。さらに、日常の 介護によって精神・肉体ともに摩耗してしまうと絶望が訪れ、自信を否定し、親しい関係性の人たちも「拒絶」 するようになってしまいます。いわゆる「あきらめ」の境地に達するのがこの時期の特徴です。
3️⃣あきらめる・割り切り
いくら怒りや拒絶で抵抗しても、認知症の症状を治したり、現状を打破することはできないと納得でき、良い意 味で諦めがつくのです。
4️⃣受容
認知症への理解が深まることで、もうちょっと介護を頑張ってもいいかな、と思えるような認知症の人との関係 性に進んでいくのがこのスッテプの特徴です。
家族が持つべき心構え
🔸焦らない
落ち着いてもらうためには、本人のペースに合わせることが何よりも大切です。介護者が焦らずに「ゆったり、ゆっく
り」話し、動くことで、本人が穏やかさを取り戻すことも少なくありません。
🔸認知症の世界を理解しようとする姿勢を持ち、原因を考える
思いがけない言動であっても、その人の世界を壊してしまうような対応は、お互いにとって不幸な結果しか生み出しませ
ん。
認知症の人に対しては、理屈よりも感情や共感によるコミュニケーションを取ることが大切なのです。
言動の裏に隠れている、本人の喜怒哀楽の感情にまずは共感しましょう。その姿勢が本人にも伝わり、安心感を生み出し
ます。
まとめ
65歳以上の高齢者のうち認知症を発症している人は推計15%で、厚生労働省研究班の調査で2025年には730万人へ増加し、65歳以上の5人に1人が認知症を発症すると推計されています。
認知症高齢者を在宅で介護する家族にとって、介護ケアに関する悩みは尽きません。なかには、これまでの仕事をやめて収入源をゼロにしたり、仕事量を減らしたりしながら介護にあたる方もいます。
そんな方のために、「このまま在宅介護を続けられるか」「介護サービスを利用したいがどんなサービスがあるのか」など、介護に関する悩みを相談できるさまざまな窓口があります。
身近にある地域包括支援センターや市町村の福祉事務所、各地域にある保健所・保健センターなどです。
インターネット上で悩みを相談することもできますし、1人で悩みを抱え込まず、相談しやすいと思ったところに遠慮せず想いを打ち明けてみましょう。悩みを吐き出したり共有したりする場を持つことも大切です。