この記事は「月刊おきなわ野球大好き」2019年10月号に載せた記事になります。
【オスグッド病の治療】サポーター、ストレッチ、筋力強化。放置はダメです!
野球選手が抱える障害の多くは、肩や肘に現れることが多いですが、ひざの痛みに悩まされている選手も少なくありません。今回は、ひざの前に痛みを生じるスポーツ障害として「オスグッド・シュラッダー病(以下、オスグッド病)」について解説していきます。
オスグッド・シュラッダー病とは?
10歳~14歳の発育期の男子に多く、膝蓋骨(ひざのお皿の骨)より3~4センチ下のすね前面の骨(脛骨粗面)が盛り上がってきたり、痛みを生じたりする障害です。(図1) |
図1
スポーツでジャンプや着地動作、ボールを蹴る動作の繰り返しなどによって生じてきます。休んでいると痛みがなくなりますが、スポーツを始めると痛みが再発します。腫れが大きいと、正座などの際に床に接することでも痛みが出ます。
ランニングやジャンプなどの動作もできなくなってしまうことも多く、重症例では将来的に手術して骨片を摘出したりすることもあります。
オスグッド病の原因
骨と筋肉の成長のアンバランスによる柔軟性低下
発育期には急速な身長の増加があり、骨が活発に伸びます。骨の成長に比べ、筋肉や腱の成長・発育は遅くて追いつかないため、相対的に筋肉・腱が緊張して柔軟性が低下した状態になることがあります。
オスグッド病では、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)の柔軟性が低下している選手が多くみられます。その結果、腱が付く部分が引っ張られて痛みを生じたり、筋肉の損傷が起きやすくなったりするわけです。(図2)
図2
姿勢アライメント不良
いわゆるX脚のようなタイプ。片脚スクワットやランジの際にひざが内側に入り、つま先が外側に向くような姿勢(ニー・イン・トゥ・アウト)になってしまう場合は要注意です。このような姿勢でスポーツ動作を繰り返すと、ひざに過度なストレスがかかりやすくなります。(図3)
図3
片脚スクワットやランジで一度姿勢チェックをしてみてください。
偏平足
偏平足はニー・イン・トゥ・アウトを伴いやすいので、このような人も、ひざへのストレスがかかりやすいと考えられます。
後方重心(骨盤後傾)
骨盤が落ち込み、重心が後ろに傾いていると、立っている時や走る時に、大腿四頭筋に過剰なストレスがかかります。
オスグッド病の治療
① 使いすぎを避ける(安静)
オスグッド病は、軽症で済む場合も多いですが、重症化したり慢性化したりすることがあります。
初期または進行期の場合、スポーツの休止、安静または別メニュートレーニングを行います。骨が分離していなければ、比較的短期間(2か月程度)でスポーツ活動を再開できます。
遊離骨片を形成し慢性的な痛みをもつ場合は、スポーツ活動中の違和感や痛みは長期間続くことが多く、このような場合には鎮痛剤やサポーターなど(図4)を使用しながら、可能であればスポーツを継続させます。
図4 オスグッドバンド
オスグッドバンドはインターネットでも購入することが出来ます。
② ストレッチ
大腿四頭筋(図5)
図5
ハムストリングス(図6)
図6
下腿三頭筋(ふくらはぎ)(図7)
図7
ストレッチングは正しい姿勢で、20秒以上行うようにします。練習の前後と帰宅後に必ず行うように習慣化しましょう。
③ 運動療法(筋力強化)
など ★詳しい運動療法については、他の記事でご紹介します。 |
④ その他(インソールやテーピングなど)
オスグッド病の予防
身長測定で年間の身長増進が約8㎝以上の場合、この数年間はオスグッド病などのスポーツ障害の発症リスクが高い時期です。身長が著しく伸びている子どもには、予防手段として圧痛テスト(押して痛みがないか)や簡単なストレッチテストなどを用いて、大腿四頭筋が緊張状態にないかどうかチェックをします。柔軟性に欠ける子どもにはストレッチングを指導するといいでしょう。
また、過度な負担はケガを増やす原因です。練習時間や試合などのスケジュールが過密でないか、休息が十分にとれているかどうかも注意して欲しいところです。
圧痛テスト(図8)
図8
ストレッチテスト
ハムストリングス(図9)
図9
90度近くまで上がることを目指します。
大腿四頭筋(踵とお尻の距離を測る)(図10)
図10
お尻と踵がつくまで(0㎝)を目指します。
尻上がり現象(図11)
うつ伏せでひざを曲げたときにお尻が浮くと、大腿四頭筋が硬くなっている証拠です。
図11
「オスグッド病の治療|サポーター、ストレッチ、筋力強化。放置はダメです!」のまとめ
症状 | 発育期のスポーツ選手が、ジャンプや着地動作、キック動作を繰り返すことで、ひざのお皿の下の骨(脛骨粗面)に痛みが出る。 |
原因 | 筋肉の柔軟性低下、使いすぎ、姿勢不良など。 |
治療 | 安静第一。サポーター、ストレッチ、姿勢改善、運動療法など。 |
オスグッド病を単なる「成長痛」と簡単に考えて放置したままにしていると、大人になっても後遺症として痛みが残ってしまうこともありますので、早く治しておきたい障害です。成人後も痛みを残し、激しいスポーツや仕事が一生行えなくなる率が20%近くもあるということです。
早期発見で治療を開始することが短期間で後遺症なく治癒出来る唯一の方法です。圧痛テスト、ストレッチテストはすぐにできる項目ですので、ぜひ継続的にチェックしてみてくださいね。
参考文献
- 山本利春/スポーツ指導者のためのコンディショニング基礎知識/大修館書店・2010
- スポーツ損傷シリーズ/1・オスグッド病/監修 日本整形外科スポーツ医学会広報委員会
- 平野篤/Osgood-Schlatter病/小児科臨床・2013
- 元木純ら/脛骨粗面骨端炎(オスグッド・シュラッダー病)の理学療法プログラム/理学療法・2008
- 菅原誠/脛骨粗面骨端炎(オスグッド・シュラッダー病)の病態と整形外科的治療/理学療法・2008
- 米田寛/成長期に注意すべきスポーツ外傷と障害/2009