野球選手の肩外旋筋筋力低下を予防する「棘下筋&小円筋トレーニングとストレッチ」
肩関節 外旋筋(棘下筋・小円筋)
図1の赤線で囲われたイラストは、投球動作のなかの「レイトコッキング期~フォロースルー期」と呼ばれる瞬間です。
図1
この「レイトコッキング期~フォロースルー期」で重要な筋肉は、「棘下筋(きょくかきん)」と「小円筋(しょうえんきん)」です(図2)。この2つの筋肉は、図2のように肩甲骨の後ろ側に付いており、肩関節を外向きにひねる「外旋(がいせん)」と呼ばれる動きを行います(図3)。
図2 外旋筋(棘下筋と小円筋)
図3
投球動作によって外旋筋が消耗する
外旋筋は、ボールを投げる際、勢いよく振られ引っ張られる腕全体に後ろ側からブレーキをかけることで、肩関節にかかる負担をやわらげる役割があります(遠心性収縮)。1球ごとに微細な損傷を受け続けることになるため、肩関節外旋筋群は連続投球によって疲労が生じやすい筋肉といわれています。
疲労が溜まった筋肉は柔軟性がなくなるため、可動域の低下や筋力の低下、筋肉の萎縮などが起こってきます。また、パフォーマンスの低下や野球肩を引き起こす原因ともなります。
プロ野球のピッチャーの中にも、シーズンが終わるころには棘下筋の厚さが薄くなっていたり、内旋可動域の低下や筋力が低下したりしている選手が多くみられます。
ゼロポジションでの外旋筋力低下
「ゼロポジション」とは肩甲骨と上腕骨の長軸が一直線になるポジションで、肩関節で最も安定したポジションのことを言います。このゼロポジションでボールリリースができると、投球時の肩への負担が減らせると言われています。
西中による研究によると、「野球選手は、非投球側に対し投球側でゼロポジションでの外旋筋力が低下する」と報告しています(図4)。
図4 ゼロポジションでの外旋筋力
昨年、私たちが行った高校硬式野球部の選手に対するメディカルチェックにおいても、ゼロポジションでの外旋筋力を測定しましたが、11名中8名(73%)の選手が、非投球側に比べて、投球側で外旋筋力の低下を認めました。それだけ多くの選手の外旋筋が疲労し、機能の低下が起こっているということになります。
外旋筋の疲労蓄積によるケガを起こさないためにも、外旋筋のトレーニングとストレッチを習慣化して欲しいと思います。
以下にいくつかの外旋筋トレーニングとストレッチを紹介します。
外旋筋力強化トレーニング
セラバンドを使って。
横向きでダンベルを使って。
座ってテーブル上に肘を固定して。
うつぶせで。
ゼロポジションでの外旋筋トレーニング
壁で肘を固定して。
肘を浮かせて(肩挙上位)。
外旋筋ストレッチ
片ひざの上でひじを固定して。
うつ伏せで。
反対の手で肘を固定して。
【まとめ】肩外旋筋の筋力低下を予防する棘下筋&小円筋トレーニングとストレッチ
連続投球を行うことで外旋筋(棘下筋と小円筋)に疲労が蓄積すると、内旋可動域が減少し、筋力低下が起こります。その結果、投球パフォーマンスの低下にもつながり、ケガの原因にもなります。
野球肩や野球肘を予防するためにも、外旋筋のストレッチと筋力強化は必ず定期的に行うようにしてくださいね。
参考文献
- 西中直也ほか:投球障害肩 -診察のポイント、診断のコツ‐. MB Orthop. 2017
- 原正文:投球障害肩の診断と治療. 日整会誌 2017
- 吉原圭祐ほか:野球の連続投球による肩関節外旋筋群の筋疲労. 理学療法科学 2012
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