野球選手に重要な股関節機能 「外旋と内旋」編

野球選手に重要な股関節機能
「外旋と内旋」編

今回は『内旋(ないせん)』『外旋(がいせん)』の動きについて紹介していきます。

図1

投球動作は「並進運動」と「回転運動」が複合的に行われている

並進運動とは、捕手方向に横移動する動きです。軸足で立って踏み込み足が地面に着地する直前までの間の運動です。(図2)

回転運動とは、踏み込み足が着地してから投げ終わりまでの運動です。(図3)

この並進運動と回転運動時に股関節の外旋・内旋は重要になってきます。

図2
図3

【股関節の「内旋」「外旋」の機能をみるテスト】

次の2つのテストは、股関節の「外旋」「内旋」が上手く機能しているかどうかを簡単にチェックする検査です。

ちょっとチャレンジしてみてください。

【外旋・内旋の機能チェック】

うつ伏せになり、膝関節を90°曲げ、内側に足を倒します。(外旋)うつ伏せになり、膝関節を90°曲げ、外側に足を倒します。(内旋)・45°以下だと柔軟性の低下。
・足を倒した時に骨盤が浮かない(図5)


図4

図5

いかがでしたか?

このテストで適切でない動作になるのであれば、あなたの股関節「外旋・内旋の機能は低下している可能性が高いです。

股関節の機能が低下すると、野球の動作がうまくできなくなったり、障害の発生にもつながったりします。

 

野球のプレーで股関節の外旋・内旋が必要な場面

・投球動作(右投げの場合):並進運動後期、左側の足を踏み込みに行く時。(外旋)

回転運動時、投手側の足を踏み込んだ後、右の股関節が回って骨盤が回旋してくる。(内旋)

投げ終わった後、ステップ足一本で立つ時。(内旋)

・バッティング動作:投手側の足を踏み込みに行く時。(内旋)

投手側の足を踏み込んだ後、骨盤を回旋させて打ちに行く時。(内旋)

 

股関節外旋・内旋ができない原因として考えられるのは

・股関節回旋筋の機能低下(筋力が弱い)

・股関節回旋筋が硬い(柔軟性の低下)

・体幹筋力が弱い(安定性の低下)

 

股関節外旋・内旋制限が投球時に及ぼす影響

股関節機能の低下は投球障害発生に関係していると言われています。ステップ側股関節内旋可動域制限があると投球時において前方への体重移動や骨盤の回旋が妨げられる可能性があります。その代償として、体幹の回旋が大きくなったり、開きが早くなったりします。結果、肩や肘へのストレスが増加し痛める要因になります。

 

股関節機能を高めるために行いたいトレーニング

以下は、股関節の「内旋」「外旋」の機能を高めるためのトレーニングとストレッチの紹介です。

 

  • 股関節内旋・外旋運動
    ・両膝を立てた姿勢で床に座る。
    ・両膝を右・左に交互に倒し、両股関節の内旋・外旋運動を行う。


図6

※骨盤・背骨が丸まらないように意識する。(図7)

図7

 

  • ワイドスタンススクワット
    ・足を肩幅より広く開き、膝とつま先を外側に向ける。
    ・骨盤を立て、膝とつま先が外側に向いたままスクワットを行う。※骨盤後傾や猫背にならないように注意する。(図9)
    ※内股にならないように注意する。

図8 

図9

外旋筋の強化

  • ゴムチューブを使った外旋運動
    ・股関節45°で横になり、両足を重ねた姿勢から始める。
    ・股関節外転・外旋運動を反復する。
    ※股関節外転・外旋運動をする際に、体幹や骨盤が回旋しないように注意する。(図11)

図10
図11


投球動作に類似したトレーニング(右投げの場合を想定)

  • 回旋運動Ⅰ(プレート)
    ・高さのある所に右足を置き、左足を地面に置く。(図12①)
    ・プレートは投球側の肩あたりで保持する。(図12①・②)
    ・捕手側に体重移動をしながら右足の股関節を内旋して回 転運動を開始する。(1213③〜⑥)

図12

図13

※右足側の膝がつま先より下に落ちないように注意する。(図14)
※腕の力でプレートを操作するのではなく、骨盤をしっかり回旋さ せる。

図14


  • 回転運動Ⅱ(木棒)
    ・木棒を担いで、投球時に踏み込んだ姿勢を作る。(図15 ①)
    ・右足の股関節をゆっくり内旋させていき、骨盤の回旋を していく。(図15②〜③)
    ・投げ終わりの位置までしっかり骨盤・体幹を回旋させる 。(図15④)
    ・投げ終わりの位置にきたら、左足でしっかり1本足で立 つ。(図15④)

図15


まとめ

今回は、股関節の「外旋」「内旋」について紹介しました。野球の動作の中で投球時やバッティング時に回転する動きが多々あると思います。その際に必要になってくるのが股関節の「外旋」「内旋」の動きです。手投げ・手打ちになっている方、肩や肘の故障をしている方は股関節の「外旋」「内旋」の動きを確認してみましょう。

 

参考・引用文献

・野球トレーニングの新常識 体力・技術向上メソッド 辻 孟彦/著 ベースボールマガジン社 p19〜23

p156〜158

・機能解剖と運動療法 編集:工藤 慎太郎 p138〜141

・遠藤ら:投球時痛を有する中学生野球選手の身体機能の特徴−簡易的な機能テストを用いつ評価 理学療法士学科 343):303-3082019

・内田ら:ステップ脚股関節筋力と投球動作の関連性に関する運動学的検討.  日本臨床スポーツ医学会誌Vol.27 No.3, 2019