はじめに
三角筋とは
三角筋は肩関節を覆うように存在しており、前部・中部・後部の3つに分かれています。(図1図2)それぞれが異なる方向の動作をサポートし、肩関節の動きにおいて重要な役割をしています。
- 前部線維:腕を前方に上げる(屈曲)動作や内旋に関与
- 中部線維:腕を横に上げる(外転)動作に関与
- 後部線維:腕を後ろに引く(伸展)動作や外旋に関与
図1 図2
野球における三角筋の重要性
投球動作
投球動作で三角筋は、主にコッキング期からフォロースルーで働きます。コッキング期では、トップに持っていく際に外転(腕を横に広げる)動作で働きます。(図3)
ここで三角筋の筋力低下などがあるとトップの位置が低くなり、肘下がりでの投球動作になってしまいます。(図4)
また、三角筋後部線維は投球で力強く振った腕を減速させるブレーキ筋として働きます。この時、三角筋後部線維には引っ張られるストレスがかかります。このストレスに対して抵抗する(遠心性収縮)為、三角筋後部線維が機能低下すると肩関節後方に負担がかかります。
図3
図4
バッティング動作
バッティングにおいても、三角筋は重要な役割を果たします。構えてからバットを振り抜く際、インナーマッスルと三角筋が共に働くことで肩関節を固定し、下肢や体幹から伝わってきた力をうまくバットに伝えていきます。
三角筋のストレッチ・チューブトレーニング
野球選手にとって肩関節はとても大切な部位です。投球動作やバッティング動作で使うだけでケアを怠ると、ケガにつながります。そこで、プレーする前のアップやプレー後のクールダウンの際にできるセクササイズ・ストレッチを紹介します。ぜひ、やってみて下さい。
チューブを使った三角筋エクササイズ
はじめに肩幅に足を開き、投球時の踏み込み足でチューブを踏んで固定します。その後、投球側の手でチューブを持ち、テイクバック時と同じように腕を横に開きながら肘関節を肩関節の高さまで引き上げます。(図5)
引き上げる際に、肩関節がすくむように上がるのは良くありません。(図6)
図5
図6
三角筋前部線維ストレッチ
四つ這い姿勢から図7のように投球側の腕を横に伸ばし、体幹を投球側と反対側に回旋させます。投球側の肩を地面に近づけるようにするとよりストレッチ感を感じられると思います。
図7
三角筋後部線維ストレッチ
四つ這いの姿勢から図8のように、投球側の腕を非投球側に腕を伸ばし、体幹は投球側に回旋させます。投球側の肩を地面に近づけるようにするとよりストレッチ感を感じられると思います。
図8
まとめ
野球において三角筋は肩の動きをする主な筋肉であり、力をボールやバットに伝えるにはとても大切です。三角筋の機能を高めることで効率よく投球やバッティングを行う事ができ、長期的な競技生活を送るための土台を築くことができます。
参考文献・引用
著者:菅谷啓之 能勢康史 新版 野球の医学
著者:牛島詳力 投球により肩、肘に起こる外傷 トレーニング・ジャーナル 41(7):36-39,2019