【はじめに】
今回は野球における、頭部外傷·脳震盪(のうしんとう)について発信していきたいと思います。野球現場においては、「打者で頭部にボールが当たる」「守備で頭部にボールが当たる」「他者が振っているバットが頭部に当たる」「守備で頭部がフェンスや他者と衝突する」などがあります。みなさん、適切な対応はできていますか?
【頭部外傷·脳震盪とは】
頭部外傷とは、頭部になんらかの外傷が加わることで、頭皮·頭蓋骨·脳に明らかな損傷が起こることを指します。頭部外傷により、脳内に問題が起こる場合には、眼球運動の異常や痙攣、硬直などが起こります。
脳震盪は、首から上に大きな衝撃が加わることによる脳の障害のことです。脳の機能障害により、吐き気·頭痛·痙攣·めまい·意識混濁·ふらつき·立位困難·短期記憶の健忘など複数の症状が生じます。
【頭部外傷·脳震盪が疑われる症状】
·頭痛
·認知機能低下 ·倦怠感 ·認知障害(反応時間の遅れ) ·意識消失 ·健忘症 ·神経障害 ·異常行動 ·睡眠/覚醒障害(傾眠、眠気) |
一般的な脳震盪の症状】
·頭痛
·頭が締め付けられるような頚部痛
·吐き気、嘔吐
·めまい
·視界がぼやける
·光、音に過敏
·バランス障害(足元がふらつく)
·動作が鈍くなる(反応が遅い)
·集中力低下
·いつもより感情的
·怒りっぽい
·神経質になる。不安症、心配性。など
【red flags (警告症状)】
·複視(ものが二重にダブって見える)
·手足に力が入りにくい。チクチク、ジンジンするような。燃えるような感覚
·激しい頭痛が再度ひどくなる
·てんかん、痙攣
·意識喪失
·意識状態の悪化
·嘔吐
·落ち着かない。興奮気味、攻撃的(ケンカ腰)になる
Red flagsとは警告症状を意味しており、迅速に医療機関の受診を行った方がいい症状のことを指します。
【頭部外傷·脳震盪が起こったらどうする?】
頭部外傷·脳震盪に対する、ファーストエイド(ケガした人を助けるための最初の行動)は、「むやみに動かさず、頭頸部を固定する」ことです。むやみに動かすと、症状の悪化の危険があるので安全が確保されるまで、動かさないことが原則です。
固定法を図1、図2に、事故が起きてのフローチャートを図3にまとめました。1)から引用
図1
図2
図3
バランステストとは、閉眼し両足を前後に位置させ20秒間保持させることです。20秒間のなかでバランスを崩すことが6回以上あれば問題ありとなります。
図1は簡易的な評価であり、トレーナー現場では「SCAT5」という評価スケールを用いることが多いです。早期の評価と、時間を空けて継続的に評価を行う必要があります。
前述で記載した、脳震盪の一般的な症状の多くは7日~14日で改善が見られることが多いとされているが、長期間の症状の持続で脳震盪後症候群を発症する場合もあります。脳震盪の症状が消失されない状態で競技復帰し、2度目の損傷を受けることで症状が重症化する、セカンドインパクト症候群へ注意もある。その為、競技復帰は慎重に進めないといけません。
図4
学業復帰に関しても、慎重に進める必要があります。図5に示してあります。
図5
【まとめ】
·脳震盪は、軽症でものちに悪化することもあるため、ファーストエイドや脳震盪の評価などをトレーナー、保護者が適切な対応を行うことが重要である。
·脳震盪後症候群やセカンドインパクト症候群の理解を深める必要がある。
·脳震盪後の競技(学業)復帰は慎重に進める必要がある。
【参考文献】
1)著者:笠原政志 医学監修:富田一誠 ベースボールマガジン社 絶対に知っておきたい野球現場のファーストエイド
2)編集:広瀬統一ら4名 文光堂 アスレティックトレーニング学 アスリート支援に必要なクリニカルエビデンスp 392-397
3)日本臨床スポーツ医学会 学術委員会 脳神経外科部会 第二版 頭部外傷 10ヵ条の提言