【はじめに】
今回は、野球の動作には欠かせないスイング動作について発信していきたいと思います。因みにみなさんは、スイングスピードを速くするためにはどのようなことを意識していますか?私も昔は野球をかじっていましたが、スイングスピードの速度を上げる為に何かを行っていたかというと、そんなに思いつかずひたすら素振りを行っていた記憶があります。素振りを行う事はもちろん大切なのですが、スイングスピードが速い選手はどこの筋肉が発達しているかというのを医学的に説明できたらと思っています。
【主にどこの筋肉使う?】
谷中ら1)や蔭山ら2)の研究文献によりますと、中学~大学野球選手の体幹筋力および下半身筋力はスイングスピードに関連すると言われています。因みに小学生に関しては、身長が関与すると言われています。
では、スイングスピードが速い選手はどのような筋肉が発達しているのでしょうか。
それを以下の通りです。
①左右の内腹斜筋
②捕手側の脊柱起立筋
③捕手側の大腿四頭筋
④左右のハムストリングス
以上の4つが主に発達していたとのことでした。
これらの筋肉はどこを示すのか、図1にまとめてみました。
今回は、①内腹斜筋のトレーニングを発信していこうと思います。
【内腹斜筋の役割】
内腹斜筋は、スイングの際に、①投手側の脚が接地し、②骨盤が投手方向へ回転することでスイングが開始します。その際に骨盤の回転に対して遅くならないように③胸郭部分が素早く回転し、体幹部分を一体させる役割があります。体幹部分が一体になる事で、固定力が強くなり大きな運動量を生じさせることが期待できると言えます。
また、文献4)に記載してある、ゴルフスイングのエックスファクターの原理と同じと言えます。黒い線が骨盤の動きで赤い線が肩甲帯の動きになります。骨盤の動きと肩甲帯の動きにひねりの動き(内腹斜筋の収縮)が加わり上肢に大きい力を伝達させることができます。文献4)から引用
【トレーニング】
①ロシアンツイスト
②レッグロール
③サイドブリッジ
④メディシンボールサイドスロー
①~③は、段階的に初めに行う事を推奨します。
④に関しては、中学生は約3キロ。高校生以上は約5キロがいいと思います。
また、④は右打者だからといって、右のみ行うのではなく両方行うようにしましょう。
【ケガのリスク管理】
・内腹斜筋や外腹斜筋の柔軟性が低下している状態は、「肉離れ」が起こりやすいのでトレーニングも大事ですがストレッチも行うようにしましょう。
・今回は内腹斜筋のトレーニングに重きを置いていますが、股関節の柔軟性が低下している状態だと腰への負担が大きくなり「腰椎分離症」という腰の疲労骨折も引き起こしやすいので注意が必要です。
動画を用意しました。こちらで見ていただけると幸いです。
【まとめ】
- スイングスピードが速い人の特徴として、「左右の内腹斜筋・捕手側の脊柱起立筋・捕手側の大腿四頭筋・左右のハムストリングス」が発達している事が分かった。
- 筋肉一つ一つに役割があり、各関節の可動性も重要だと分かった。
- 一つ一つの筋肉のトレーニングは重要だが、それと同時に可動性を獲得するための柔軟が必要である。
※長打を打つには、スイングスピード(ヘッドスピード)×ミート力が必要となります。
高打率を獲得するのであれば、スイング速度の安定性(何度振っても同じ速度が出る事。スイングスピードにバラつきがない事)が必要なことが分かっています。
また、スイングスピードが速くなったからと言ってホームランが量産するとは限りません。ミート率も上げながらスイングスピードを上げるようにし、スイングスピードの安定性が獲得できれば最強の打者になるかもしれません。
【参考文献・引用文献】
1)研究論文(原著) 谷中ら2名 野球打者の下肢および体幹部の筋横断面積とスイングスピードとの関係 トレーニング科学 vol.32 No.4 2020
2)研究論文(原著) 蔭山ら4名 野球選手におけるバットスイング速度の変化に関する横断的研究 トレーニング科学 vol.32 No.3 2020
3)著NSCAジャパンヒューマンサポートセンター監修 福永哲夫 strength&conditioning exerciseBible 実業之日本社 2021.1.28発行
4)ゴルフ障害の治療・予防・コンディショニング ゴルフスイングにおける動作分析と機能的トレーニング 臨床スポーツ医学:vol.33.No.3(2016-3)
5)笠原政志 野球を科学する 最先端のコンディショニング論 竹書房