野球選手に超重要な股関節機能 「内転と外転」の巻

野球選手に超重要な股関節機能 「内転と外転」の巻

以前の記事では、股関節機能のうち「屈曲」と「伸展」についてお伝えしました。
>「屈曲と伸展」機能についての記事はこちら

今回は、「内転(ないてん)」「外転(がいてん)」に注目していきます。(図1)

(図1)

股関節の「内転」「外転」の機能をみるテスト

次の2つのテストは、股関節の「内転」「外転」が上手く機能しているかどうかを簡単にチェックする検査です。

ちょっとチャレンジしてみてください。

内転の機能チェック

横向きに寝て、下側の脚を上げて10秒間保持します。(図2)

☆ひざをまっすぐ伸ばしたまま10秒間、高く上げ続けられたらOK

図2

適切でない動作
  • 10秒間保持できない
  • ひざが曲がっている(図3)
  • 上げる高さが低い

図3

外転の機能チェック

1.横向きに寝て、上側の脚を上げて10秒間保持します。(図4)

☆体を一直線に、ひざをまっすぐ伸ばしたまま10秒間、高く上げ続けられたらOK

図4

適切でない動作
  • 脚を上げられない
  • 10秒間保持できない
  • 体がくの字に曲がっている(図5)
  • 体幹が安定していない

図5

2.片脚立ちで10秒間保持(図6)

10秒間、体幹・骨盤が横にブレないで安定して立っていられればOK

図6

適切でない動作(図7)
  • 体幹が軸足側に倒れる
  • 上げた脚の側に骨盤が傾く

図7

いかがでしたか?

このテストで適切でない動作になっていたら、あなたの股関節「内転・外転」の機能は低下している可能性が高いです。
股関節の機能が低下すると、野球の動作がうまくできなくなったり、障害の発生にもつながったりします。

野球のプレーで股関節の内転が必要な場面

  • 投球動作&バッティング動作:前側の足をステップした後、両脚の内転筋で股関節を絞めながら骨盤を回旋させる(図8、9)
  • 走塁・ダッシュ動作:踏み出した前側の脚に後側の脚を引き付ける動作

図8

 

図9

股関節「内転」動作が上手くできないと、、、

◆ 球速やスイングスピードが低下します。

股関節内転筋の筋力が強い選手ほど、球速やスイングスピードが上がると言われています。
内転筋が上手く使えないと、パフォーマンスも思うように上がらない可能性があります。

股関節内転が適切な動作でできない原因として考えられるのは、

  • 股関節内転筋の機能低下(筋力が弱い)
  • 体幹の筋力が弱い(安定性の低下)
  • 股関節外転筋が硬い(柔軟性低下)

などです。

野球のプレーで股関節の外転が必要な場面(図10)

  • 投球動作:ワインドアップ期でのバランス、骨盤の安定。後ろ脚で体重を前方に移動させる動作
  • 守備、走塁動作:サイドステップ、スタートダッシュ時に後ろ足で蹴る動作、切り返し動作
  • 打撃動作:後ろ脚で体重を前方に移動させる動作

図10

股関節「外転」動作が上手くできないと、

◆ 片脚立ちが不安定になります。

片脚立ちが不安定になると、その後の投球動作が乱れ、野球肩や野球肘の発生につながる可能性があります。

股関節外転が適切な動作でできない原因として考えられるのは、

  • 股関節外転筋(中殿筋など)の機能低下(筋力が弱い)
  • 股関節内転筋が硬い(柔軟性低下)
  • 体幹の筋力が弱い(安定性の低下)

などです。

体重移動の際に重要な「内転筋と外転筋」

野球のプレーでは、特に「内転筋と外転筋」による体重移動がとても重要です。投球動作も打撃動作も走塁・守備動作も、体重を移動させることによって動作が始まります。

自分の体重を前後・左右に上手に移動させることができないと、エネルギーを効率よくボールやバットに伝えられないため、力強いボールが投げられなかったり、鋭いスイングができかったり、素早くステップを踏めなかったり、ということになります。

股関節機能を高めるために行いたいトレーニング

以下は、股関節の「内転」「外転」の機能を高めるためのトレーニングとストレッチの紹介です。

股関節内転筋の強化

ワイドスタンスでのスクワット(図11

図11

サイドブリッジアダクション(図12

図12

股関節外転筋の強化

ゴムチューブを使った外転運動(図13)

図13

サイドブリッジアブダクション(図14)

図14

ゴムチューブをひざ下に巻いて横に進む(図15)

図15

股関節機能をあげるために行いたいストレッチング

胸椎の回旋+内転筋のストレッチ(図16)

図16

股関節外転筋ストレッチ(図17、18)

図17

図18

まとめ

今回は股関節の「内転」と「外転」について紹介しました。野球のプレーと結び付けて考えてみると、色んな気づきが得られると思います。次回は股関節の「内旋」と「外旋」について解説する予定です。

参考文献

  • 谷中ら:野球打者の下肢および体幹部の筋横断面積とスイングスピードとの関係. トレーニング科学 2020
  • 内田ら:中学野球選手におけるステップ脚股関節の力学的仕事量と球速の関連. 日本臨床スポーツ医学会誌 2020
  • 中村ら:ファンクショナルトレーニング. 文光堂 2020