当院では一般的な肩の痛み(肩関節周囲炎)や腱板断裂、スポーツ選手の肩疾患などの患者様が多く来院されます。
その中でも、今回は、中年以降に多いと言われている五十肩についてです。
五十肩では、誘因なく痛くなり「安静にしてたら治った」という言葉をよく耳にします。
しかし、痛みをぶり返し当院に来院される患者様がいるのも事実です。
そこで、自分の今の状態を知るためにセルフチェックや症状、痛みの時期、予防をまとめてみたので説明していきたいと思います。

五十肩(肩関節周囲炎)の原因と症状

肩関節に痛みが生じ肩の動きが悪くなり日常生活に制限をもたらす疾患です。
原因としては、外傷性ではなく、加齢により血液循環が悪くなったり、筋や腱の変性が起こり、肩関節軟部組織の炎症で痛みや腫れが生じる疾患と言われています。
症状としては、
1・痛みが強く夜も寝れない(夜間痛)
2・腕が挙がらない
3・後ろのものを取るときに痛む
4・髪が結べないなど症状はさまざまです。
中年以降、40~50代に多いと言われており「四十肩」「五十肩」と呼ばれています。

五十肩 痛みの発症時期

・急性期(数日~2週間前から疼痛が出現)
急性期での疼痛の要因としては、主に炎症が起きている場合が多く、痛みや可動域制限が著明にでてきます。
安静時痛、夜間痛があり痛みにより自分自身で身体を固めてしまい日常生活での制限が多くみられます。
「痛くても動かさないといけない」と思われがちですが炎症を悪化させる原因にもなってきますので無理は禁物です。
この時期では、
1・注射
2・薬物療法
3・リハビリでのリラクゼーションや日常生活指導(睡眠時のポジショニング、局所安静の必要性)を行い、疼痛コントロール良好に努めていきます。

・慢性期(3カ月以上前から疼痛が出現)
急性期とは違い鋭い痛みから鈍い痛みに変わってきます。
炎症からの影響で筋が固くなってしまい徐々に可動域制限がでてきます。(肩関節拘縮)とも言われています。
慢性期では
1・肩が挙がりにくい
2・洋服の着脱
3・洗髪動作が上手く出来ないなど日常生活への支障もでてきます。

徐々に痛みは軽減し日常生活でも患側をかばう必要性はなくなってきますが、可動域制限は残存します。
痛みが軽減してきたからといって無理をすると痛みをぶり返し炎症にも繋がってくるので注意が必要です。
この時期では、自分で動かしても痛くない範囲での訓練を確認し徐々に可動域向上、疼痛軽減に繋げていきます。

五十肩 痛みの緩和、ケア

急性期
1・患部に熱感がある場合は、氷水などで炎症を抑えます。
2・痛みがでる動作を避け、安静にすることを心掛けましょう。
3・痛みが強い場合は、ステロイド薬注射や消炎鎮痛効果のある外用薬や飲み薬も効果的です。

慢性期
1・患部を冷やさないようにホットタオルなどで温めましょう。
2・体が温まってきたら、ストレッチや運動で無理のない範囲で動かしていきしょう。
※無理をする時期ではないので痛みがある場合は、控えて下さい。

五十肩の予防

・長時間同じ姿勢での作業を続けない
長時間同じ姿勢での作業を行うことで筋が固くなり、動かしにくくなります。
また、疲れてくると姿勢も崩れてくるので肩だけでなく他の部位にも負担がかかってきます。そうならないためにも、適度に休憩を入れストレッチを行うなど体を動かすようにしましょう。

肩のストレッチ、運動を行う
筋が固く動きが悪くなった肩をストレッチすることで体が温まり、筋がほぐれ血流の循環もよくなってきます。
また、肩のストレッチ、運動を行うことで肩だけでなく背中や頸にもつながってくるので背中や頸部のケアにもなってきます。
そこで、いくつか写真を挙げたいと思います。

まずは、ストレッチ編です。赤い矢印のところを意識して、自分が「伸びてるな~」と感じるところでとめてもらい10~15秒キープします。
呼吸は止めずにやりましょう。痛みがある場合は、無理しないように。

1・広背筋、大円筋のストレッチ…伸張させたいほうの手を上に組み肩が挙がる位置まで挙げ、伸張させたいほうの反対側に身体を倒します。

2・肩甲挙筋のストレッチ…伸張させたいほうの肩を後方で組み、固定します。反対側の頸部をそのまま、反対側に倒します。

3・三角筋(中部線維)…図のとおり、身体の前で腕を組んでもらい伸張させたいほうの反対側に引っ張っていきます。
この時、伸張している側の身体を引っ張っている方向に捻るとより伸張感を強めることができます。

次に運動編です。1日、10回目安でやってみてください。ストレッチ同様、無理はしないで行ってみましょう。

1・2)肩甲骨周囲の運動…1は開始肢位です。前から後ろに回します。この時に、肩甲骨を寄せる意識をしてみましょう。

3)両肩を耳の近くまで挙げそこから、一気に力を抜きます。

4・5)4は開始肢位です。頭の後ろで手を組んでもらい外側に広げます。
※長時間のデスクワークや家事などの間にやってみてくださいね。身体が少しは楽になると思います。

・体を冷やさない
体の冷えは血流の循環を悪くし筋も固くなってきます。そうなってくると、肩が挙がらない、肩を後ろに回せない、髪が結べないなどの原因にも繋がってきます。
今の季節は特に暑くてついクーラーの温度を下げて涼しく過ごす方も多いと思います。
クーラーに直接、当たり涼むのではなく、適度に部屋を冷やし、涼むように心掛けましょう。

五十肩のセルフチェック

まずは、自分自身でチェックしてみましょう。
これから、行う動きの際に痛みがあったり、スムーズに動かせない、明らかな左右差がある人は要注意かもしれません。


1屈曲動作…両腕を前から真上に挙げてみましょう。
2外旋動作…両腕の肘を90度に曲げて肘は固定したまま外に開きます。
3結帯動作(内旋)…両腕を背中で組んでみましょう。
4(内旋)ズボンの後ろポケットに手を入れてみましょう。
5外転動作…手のひらを真上に向けて真横から挙げてみましょう。

・まとめ
五十肩は「放っておけばいつか治る」と思われがちです。
痛みがなくなる人もいれば、1年、2年たっても治らない人もいます。また、痛みはないけど可動域制限が残る人などさまざまです。自分の状態を知るためにセルフチェックや痛みの時期などを確認して予防やケアを行い改善がなければ一度、お近くの整形外科医院に行くことをお勧めします。

宜野湾整形外科医院 リハビリテーション科
理学療法士 伊藝孝太