投球初期動作が及ぼす影響

【はじめに】

 投球時に監督やコーチ、指導者に体の開きが早い」「インステップになりすぎているなど指導をされた経験がありませんか?その原因には投球始めの下半身の使い方に問題があるかもしれません。そこで今回は投球初期の下半身の使い方に注目していきます。

【投球動作における5つの相】

 投手のピッチングやキャッチボールでの投球動作では5つの相に分けることができます。

※右投げの場合

①ワインドアップ期:投球動作を開始する時から左膝を最も上げた時まで。

②早期コッキング期:①から足が地面に着くまで。

③後期コッキング期:②から右腕が最も大きくしなった時まで。

④加速期:③からボールリリースまで。

⑤フォロースルー期:④以降。

図1

【投球初期動作の不備が及ぼす影響】

 投球動作の中で投球始めのワインドアップ期から早期コッキング期にかけての下半身動作の不備が、その後の後期コッキング期からフォロースルー期にかけて肩・肘への負荷を大きくさせて、投球障害を引き起こすことは少なくありません。

【不良な投球初期動作】

ワインドアップ期

地面に対して真っ直ぐに立てていない姿勢で投げに行くと、体重移動の際に後方重心になり体の開きが早くなります。その結果、腕が体と一緒に回転してこないまま投げに行くことになります。

図2

 

早期コッキング期

 軸足の股関節・膝関節・足関節(3つの関節)が曲がるトリプルフレクション姿勢を作れていないことがあります。特に、図3の左のような股関節の曲がりが浅い場合が多いです。この動作不良によって、踏み込み足の過度なインステップや早い体の開き、腕の過度なトップ動作を引き起こしてしまします。

図3

【片脚立位姿勢トレーニング】(ラダーを用いて)

このトレーニングは、繰り返しの動作の中でいかに正しい姿勢でできるかを目的に行い、投球時の片足立の安定性向上を目指します。

良い例:ラダーで片足設置した時に肩から足にかけて一直線になっている(図4)

良くない例:ラダーで片足設置した時に姿勢が一直線になっていない(図5)


【下半身を使って投球できるためのトレーニング】

股関節・膝関節・足関節の3つの関節を曲げた状態(トリプルフレクション)から、3つの関節を瞬時に伸ばす(トリプルエクステンション)動作の獲得をするトレーニングです。

・トリプルフレクション動作

 棒やシャフトを担いで軸足(右投げの場合右足)に体重を乗せていくスクワットを肩・膝・足

が直線になるまで股関節・膝関節・足関節を曲げていきます。(正面図6)

棒やシャフトを担いで軸足(右投げの場合右足)に体重を乗せていくスクワットを体幹とスネが平行になるように行っていきます。(側面図7)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図6

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図7


・トリプルフレクションからトリプルエクステンション動作

 横方向に力強くジャンプすることで股・膝・足の3つの関節が曲がった姿勢(トリプルフレクション)から股・膝・足の3つの関節が伸びた姿勢(トリプルエクステンション)を作り出す。(図8)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図8

【まとめ】

今回は投球動作の脚を上げる時期から体重移動をして踏み込むまでの時期に注目して紹介しました。投球動作はモーションに入って投げ終わるまで一連の流れで行われます。最初の段階で体の使い方にズレが生じるとその後のフォームも崩れていきます。最初の段階ではバランスや下半身の使い方が重要になってきますので、肘や肩を痛めた経験のある方は投球フォームのはじめにも着目してみましょう。

【参考文献・引用】

・【編集】筒井廣明 山口光國 千葉慎一:投球障害予防&治療プラティカルガイド メディカル・スキル・コンディショニングの架け橋P167P170

Ryan L.CrotinNSCA JAPAN 野球の試合のためのスピードトレーニング Volume16,Number8,11-23