はじめに
今回は野球選手に必要な腱板筋群(インナーマッスル)の中で、肩甲下筋の役割やトレーニング方法を紹介していきます。
肩甲下筋の付着部
肩甲下筋は、肩甲骨の前面から上腕骨の前に付着する筋肉です。(図1)
図1
役割・作用
肩甲下筋の作用は肩関節を内旋(腕を内側に回す動き)させる働きをします。(図2)また、前回・前々回ブログで紹介した棘上筋や棘下筋と同じく、腱板筋群(インナーマッスル)の一つであり肩関節を安定させる機能を持っています。
図2
投球と肩甲下筋の関係性
肩甲下筋は投球動作において特にコッキング期から加速期(図3)にかけて重要になってきます。
コッキング期から加速期にかけて肩関節は外旋運動を行います。(図4)この際、肩関節には外旋ストレスがかるのですが、外旋し過ぎないように肩甲下筋がブレーキをかけています。肩甲下筋の機能不全や筋力低下が起きたまま投球を続けていると、外旋ストレスに耐えきれず肩関節の前方に存在する軟部組織(筋や腱・関節包など)を損傷してしまいます。
図3
図4
肩甲下筋トレーニング
肩甲下筋は他の腱板筋群と共に肩関節を安定させる役割があり、脱臼や腱板損傷を防ぎます。特に投球時の腕が加速していく時期と、リリース時に肩の安定性を保つ必要があります。そこで、いくつか肩甲下筋のトレーニングを紹介していきます。
セラバンドでのチューブトレーニング(下垂位)
肘を90°曲げ、肘が体から離れないようにゴムを内側に引っ張ります。(図5)
図5
セラバンドでのチューブトレーニング(外転位)
肘を90°曲げ、肩関節も90°真横に開きます。その後、ゴムを後方から前方に向かって引っ張り内旋運動を行います。(図6・図7)
内旋運動時に肘関節が動いてしまう方は壁などで肘が動かないように固定します。
図6
図7
肩甲下筋ストレッチ
肘を90°曲げ、肩関節も90°真横に開いたポジションから棒やバットを使って、肩関節を外旋方向に誘導します。(図8)外旋方向に誘導する事で、内旋筋である肩甲下筋をストレッチすることができます。
この際、肩関節や腕はリラックスして力が入らないように意識しましょう。
図8
まとめ
肩甲下筋は野球選手にとってとても大切な筋の一つです。肩甲下筋のトレーニングとケアはパフォーマンス向上とケガ予防に繋がります。普段から肩甲下筋のエクササイズやストレッチをおこない肩関節の安定性を強化し、より高いレベルでのプレーができるようにしていきましょう。
参考文献・引用
編集:菅谷 啓之 能勢 康史 新版 野球の医学
著者:筒井 廣明 山口 光國 整形外科医と理学療法士からのアドバイス 投球障害肩−こう診てこう治せ